着付けにも国家資格がある!「着付け技能士」ってどんな資格?
日本でも普段は洋服を着ている人がほとんどですが、結婚式や入学式などのハレの日、歌舞伎を含む伝統芸能の観劇など、着物の需要は今でも根強く残っています。ところで、「着付けにも国家資格がある」ということはご存知でしょうか?この記事では、着付けの国家資格である着付け技能士をご紹介します。取得を目指す方は、参考にしてください。
着付け技能士とは
ここでは着付け技能士について、まとめています。
■2009年に誕生した国家資格
着付け技能士は、国家資格の1つです。政令改正により、2009年に厚生労働大臣によって「着付け」も技能検定試験として追加されました。そして、2010年より全日本着付け技能センターが試験実施機関として指定を受け、現在まで技能検定を実施しているのです。
■着付け技能士の目的は何か?
着付け技能士の目的は、以下4つです。すなわち、着物の他装業務におけるスキルを向上させること、他装業務に携わる人が経済的かつ社会的に地位向上すること、他装に関するアドバイスをすることで消費者利益を向上させること、そして着付け技能の発展および振興に貢献することです。
■受験するには実務経験が必要
着付け技能士になるためには、「着付け技能検定」1級または2級にパスしなくてはいけません。「着付け技能検定」には学科試験・実務試験の2種類がありますが、学科試験については2級なら最大で2年、そして1級なら最大で5年の着付け指導における実務経験が受験資格となっています。なお、実務試験は学科試験に合格することで受験資格を得られます。
資格がなければ着付けの仕事はできない?
着付け技能士の資格がなければ、着付けの仕事はできないのでしょうか?ここではその疑問に、ズバリ答えます!
■結論からいうと「できる」
「着付け技能士の資格がないと、着付けの仕事はできないのか?」と思う方もいるかもしれませんが、結論からいうと資格がなくても着付けの仕事はできます。
実際に、フォトスタジオや呉服屋など着物の着付けが必要な求人を見てみても、初心者歓迎または経験者優遇といった案件が多くを占めているのが現実です。そもそも、2年~5年の実務経験がないと着付け技能検定の受験すらできませんので、資格がなくても着付けの仕事はできるのです。
■業務独占資格ではないため
薬剤師・医師・看護師・行政書士・弁護士など、「その仕事をするなら必ず持っていないといけない資格」があります。これを業務独占資格といいます。業務独占資格は極めて厳しい規定を設けており、無資格者が仕事をこなそうとすると法律違反になってしまうのです。その一方で、着付け技能士は業務独占資格ではないため、無資格でも仕事ができます。
■資格を持っている意味は?
では、資格を持っていても意味がないのか?というと、決してそうではありません。なぜなら「着付け技能士の有資格者である」ということは、それ自体が一定水準以上の着付けに関するスキルや知識を持っている証明になるため、着付けの仕事を探す際は非常に有利です。さらに着付け技能士は1級・2級共に取得済みの人以外は名乗ってはいけない「名称独占資格」のため、取得していることで高い信頼性が得られます。
着付けに関するほかの資格との違い
実は、着付け技能士以外にも、着付けに関する資格はいくつかあります。ここでは着付け技能士以外の着付けに関する資格と、着付け技能士特有の難易度についてまとめています。
■受験資格を得るまでが大変
着付け技能士検定は、2級なら2年、1級なら最大5年の着付けの仕事における実務経験がなければ受験資格が得られません。よって、まずは無資格・未経験から始められる着付けの仕事を、探す必要があります。そして、着付け技能検定より前に取得できる易しい資格もあるので、そこから手を付けるのもよいでしょう。
■着物文化検定について
着物文化検定は「着物文化」への理解を深めることと、着物の振興と普及を果たすことの2つを目的としています。1級~5級がありますが、3級~5級に関してはとくに決まった受験資格はありません。
また、2級は3級の合格者であること、そして1級も2級の合格者であることが受験資格となりますので、比較的取得するハードルも低いといえるでしょう。また、実技試験がなく、学科試験のみというのも特徴の1つです。
■和装師について
和装師では着物の自装だけでなく、「着物を着るためのスキル」を他者へ伝えられる着付け講師になることを目的としています。1級~3級がありますが、3級では着物の畳み方や着る時に押さえるべきポイント、着物の名称などから入っていきます。こちらは資格取得に向けた試験すらなく、日本伝統技術インストラクター協会が認定した着付け教室などでレッスンを受講することで取得が可能です。
着付けの国家資格である、「着付け技能士」についてご紹介してきました。2009年から新しく登場した資格ですが、一定水準以上の着付けのスキルや知識があることを証明するし、「名称独占資格」であることから信頼性はかなり高いといえるでしょう。将来的に着付けの専門家として食べていきたい場合は、ぜひ取得することをおすすめします。